4月の米国住宅市場に対する急速な心理的冷え込みを受け強まっていた悲観論は、その後の市場の回復により一掃されました。新型コロナウイルの影響によるロックダウン及び在宅勤務の導入により、一部の人々にとって最近好まれる地域に位置する特定の住宅への需要が高まっています。例として、ミレニアル世代や家庭を持つ人々は、人口密度の低い郊外の戸建住宅を求めるようになっており、通勤のために都市部に住むことの魅力は、より広い居住空間を求める傾向の強まりによって衰退しています。
これらの傾向を反映して、全米住宅建設業者協会/ウェルズ・ファーゴ住宅市場指数は、2020年6月に過去最大の月次上昇を記録しました。現在の住宅販売状況を示す主要な指標の上昇、販売期待の高まり、住宅購入者数の増加といった現象は、住宅ローン申請の増加、低金利、市場への信頼感の高まりといった絡み合った要因の影響を反映しています。
「この市場のV字回復は、主に、隣人とある程度の距離を確保するために屋外スペースを求める初回住宅購入者や、ホームオフィスを求める人々によって牽引されています」と、国際的な不動産資産運用会社であるウォルトン・グローバル・インベストメントCEOのビル・ドハーティ氏は説明しています。
住宅需要に沿った住宅建設
2020年5月及び6月ほど多くの初回住宅購入者を見たことがないと語る住宅建設業者もおり、住宅建設業者はこの状況が続くと予想しています。
堅調な見通しは、米国政府が4月中旬から6月末までの間に5兆ドルを市場に注入したこと、また2020年後半には中間層の雇用維持を支援するためにさらに3~5兆ドルの追加注入が予定されていることによるものですと、とドハーティ氏は述べています。
同時に、新型コロナウイルスが経済に及ぼす影響は、新築住宅の建設が進んでいる郊外では比較的限定的であると見られています。「若い社会人にとっては、都市部のアパート賃貸から、郊外の住宅購入へと移行することはそれほど大きな負担にはなりません」と、ウォルトン・グループ・アジア統括、ギャリー・トム氏は述べています。
また、米国製造業の企業がテキサス、アリゾナ、ジョージア、フロリダなどの州に事業を移転していることから、郊外での新築住宅の需要が高まっていると考えられます。
以上の状況を踏まえ、限られた住宅の供給量を押し上げるために、住宅建設業者の迅速な対応が迫られています。直近のデータによると、住宅販売数の増加は着工前の住宅に集中しており、その結果、建設中の住宅の供給は1年前と比較し15%減少しています。
パートナーシップの構築
ウォルトン・グローバル・ホールディングス専務取締役のトッド・ウッドヘッド氏は「全国的なネットワーク及び豊かな経営資源を有する国内大手住宅建設業者らは、最も恩恵を受ける立ち位置にいます」と述べています。
「全国規模の企業であるため、現在の経済状況で銀行からの資金調達に苦戦している地方企業と同じような問題に直面することはありません」と付け加えました。
こうした動きは、ウォルトンのような企業に適しています。新型コロナウイルスが発生する以前から、同社は自社で土地を開発することはせず、競合他社としてではなくパートナーとして建設業者及び開発業者と協業することに戦略的な焦点を移し始めていました。
ウォルトンが土地を購入し、土地を「預け入れ」、住宅建設業者が、地目の設定、開発、住宅建設、住宅購入者への販売を行うことで、米国トップクラスの住宅建設業者との協力が可能になります。
ドハーティ氏は、「上場住宅建設業者は、市場シェアを拡大するために即座の開発が可能な土地の購入を求めています」と述べています。
また、「ウォルトンは現在、米国の大手住宅建設業者15社のうち13社と提携しています。大手住宅建設業者との提携は、市場が強気の時期だけでなく、景気後退時においても、関わる全ての企業が信頼性を維持し忍耐強く対応できるよう、契約条件に柔軟性を持たせるという弊社の提携への取り組みによって支えられています」とトム氏は付け加えています。