経済指標は景気後退の可能性を示唆する一方、見通しは分かれる
2025年半ば現在、米国経済が景気後退に近づいている可能性を指摘するエコノミストやアナリストが増えています。逆イールド、融資環境の厳格化、根強いインフレ圧力により、懸念は一段と強まっています。経済活動を予測するための複合指標として広く注目されている全米産業審議会の景気先行指数(LEI)は4月まで5か月連続で低下しました。これは歴史的に景気悪化を示す信頼性の高い指標とされています。同時に、米連邦準備制度理事会(Federal Reserve)が金利を長期間高水準に維持する方針は、消費者心理と企業心理の双方に引き続き重くのしかかっています。
景気減速の可能性を裏付ける指標はほかにもあります。
- 社債の信用スプレッドが拡大し、投資家のリスク回避姿勢が強まっていることを示しています。
- University of Michiganの調査による消費者信頼感は低下しています。
- GDP成長率は、2024年第4四半期の2.4%から2025年第1四半期には0.8%へ鈍化しました。
ただし、すべてのデータが景気後退の切迫を示しているわけではありません。より楽観的な見通しを示すモデルや機関もあります。
- ニューヨーク連邦準備銀行の景気後退確率モデル(10年物と3か月物の米国債利回り差に基づく)では、2026年初めまでに景気後退が起きる確率を30%弱としています。
- Goldman Sachsは、貿易関係の改善と米中間の一時的な関税休戦を理由に、景気後退の確率を45%から30%へ引き下げました。同社は現在、2025年のGDP成長率を約1%と予測し、早ければ12月にも米連邦準備制度理事会が利下げを開始する可能性があるとみています。
- Barclaysはさらに強気で、貿易合意後、米国の景気後退は「もはや起こりそうにない」としています。2025年のGDP予測をマイナス成長から0.5%成長へ改定し、2026年には1.6%成長へ加速すると予測しています。
- アトランタ連邦準備銀行のGDPNowモデルは、2025年第2四半期の実質GDP成長率を3.5%と予測しています。参考までに、四半期成長率2~3%は一般に「適温経済」とされます。景気拡大を示すには十分強い一方、過熱を招くほど高くない水準です。
見通しが分かれているとはいえ、リスクは残ります。高止まりするインフレ、関税の影響の長期化、消費の弱まり、供給網の混乱の継続により、今後数四半期のうちに景気後退へ陥る可能性があると指摘するアナリストもいます。
景気後退が経済全体に及ぼす影響
景気後退は、国内総生産(GDP)が減少する期間と公式に定義されます。GDPは米国経済の健全性を最も広く示す指標です。一般的な景気後退では、鉱工業生産、個人消費、企業投資が鈍化します。建設や住宅家具など住宅関連分野の活動は一時的に落ち込むことが多い一方、賃貸住宅の需要は通常、安定するか増加します。過去の景気後退では、次のような動きがみられました。
- GDPの平均縮小率は約2.5%でした。
- 2008年の金融危機では、6四半期にわたりGDPが4.3%超減少しました。
- 2020年のパンデミックによる景気後退では、第2四半期のGDPが年率換算で9.1%縮小した後、急速に回復しました。
2025年6月時点で、第2四半期のGDP成長率予測は分かれています。
- 前述のとおり、アトランタ連邦準備銀行のGDPNowモデルは、底堅い個人消費と民間投資を背景に、年率3.5%の力強い成長を予測しています。
- 一方、フィラデルフィア連邦準備銀行の専門家予測調査は、労働市場の軟化と家計消費の減少を理由に、第2四半期を1.5%、通年を1.4%の成長と予測しています。
- S&P Global Ratingsは、減速傾向を反映し、2025年通年の成長率を1.9%と予測しています。
こうした予測の幅は、政策当局が2025年後半の経済見通しを判断するうえで直面する不確実性を浮き彫りにしています。
米連邦準備制度理事会の役割:景気後退への対応
2025年5月のFOMC(連邦公開市場委員会)会合で、当局者は、インフレ上昇と成長鈍化が同時に進むスタグフレーションの可能性に対する懸念を強めました。関税、仕入れ費用の上昇、消費者需要の弱まりが重なり、適切な政策方針をめぐる米連邦準備制度理事会内の議論は活発化しています。
現在、フェデラルファンド金利は4.25~4.50%の範囲に据え置かれていますが、市場は2025年後半の利下げの可能性を注視しています。一方、政策当局者は経済指標に基づいて判断する姿勢を強調しており、方針転換には、景気減速とインフレ緩和を示す持続的な兆候が必要だとしています。
根強いインフレと成長鈍化が同時に進むなか、米連邦準備制度理事会は、物価上昇圧力の抑制と経済活動の下支えという二つの課題への対応を迫られています。この両立は、ますます難しくなっています。
米連邦準備制度理事会は、金融政策を通じて景気後退リスクを和らげるうえで中心的な役割を担います。景気が縮小する局面では通常、借入、投資、個人消費を促すため、フェデラルファンド金利を引き下げます。
- 過去の傾向:1980年以降、米連邦準備制度理事会はすべての景気後退に対し、大幅な利下げ(通常400~500ベーシスポイント)で対応してきました。
- 保有資産に関する対応:米連邦準備制度理事会には量的緩和(QE)などの手段もあります。2008年以降や新型コロナウイルス感染症による景気後退時には、市場の安定と長期金利の引き下げのため広く活用されました。
- 2025年の見通し:インフレ率は米連邦準備制度理事会の目標である2%を上回っていますが、景気が急激に悪化した場合、政策当局は需要を支えるため利下げへ転換せざるを得ない可能性があります。
2025年3月のFOMC議事要旨によると、当局者は引き続き経済指標に基づいて判断する姿勢を示す一方、成長の下振れリスクが高まっていることを認識しています。経済状況が悪化すれば、2025年後半または2026年初めに利下げを行う根拠となる可能性があります。
過去の傾向:景気後退期における不動産・住宅市場の動き
米国経済は第二次世界大戦以降、13回の景気後退を経験しており、平均期間は約10か月です。景気後退時には通常、雇用、GDP、企業収益が鈍化しますが、不動産、特に住宅は、ほとんどの景気循環で歴史的に底堅さを示してきました。
過去8回の景気後退のうち7回では、住宅価格は安定または上昇しました。大きな例外は、過度なレバレッジと投機的な過剰建設が生じた2008年の金融危機です。景気縮小時には未開発地の価値が短期的に弱含むことがありますが、住宅需要が回復すると、成長率の高い大都市圏では開発許認可取得済みの土地が通常、速やかに回復します。
住宅価格に加え、非上場不動産投資は景気後退中およびその後も一貫して株式を上回る成果を示してきました。非上場不動産は公開市場との相関が低く、安定した賃料収入があり、評価額の調整も緩やかなため、市場変動時に投資資産全体の安定に役立ち、分散効果と収入の安定性をもたらします。
不動産の底堅さをさらに支えているのが、景気後退時の金利低下です。歴史的に、景気悪化時には金融緩和が行われ、米連邦準備制度理事会は借入と投資を促すために利下げを実施してきました。
Freddie Macのデータによると、1980年以降、米国では景気後退のたびに住宅ローン金利が低下しています。
- 2001年の景気後退後、30年固定住宅ローン金利は7.0%から5.8%へ低下しました。
- 2008~2009年の景気悪化後、金利は6.3%から4.7%へ低下しました。
- 2020年のパンデミックによる景気後退時には、過去最低水準となる約2.7%まで低下しました。
2025年後半または2026年に景気後退圧力が強まれば、現在約7%の住宅ローン金利は5~6%へ低下する可能性があります。これにより住宅を購入しやすくなり、住宅需要の回復が促されます。歴史的に、こうした金利低下は、これまで抑えられていた住宅購入需要を顕在化させ、販売件数の増加と土地開発の回復を促してきました。これは住宅分野への長期投資をさらに支える要因となります。
景気悪化時の不動産・土地投資:戦略的なリスク対策
経済の先行きが不透明な時期には、資金が値動きの大きい株式から、安定性、収入、インフレへの備えを提供する実物資産へ移る傾向があります。歴史的に、不動産、特に土地と住宅は、景気後退期にも一貫して底堅さを示してきました。
機関投資家はこの動きをますます重視しています。特に2001年と2020年の景気後退時には、住宅、物流施設、将来の開発に備えた土地保有を含む実物資産への配分が大幅に増加しました。土地投資は、特に金利低下前かつ市場需要の回復前に取得することで、長期にわたる価値を取り込める可能性があります。
ウォルトン・グローバルの土地取得・開発許認可取得モデルは、こうした長期的な景気循環を活用できるよう設計されています。住宅建設業者と提携することで、ウォルトンは開発業者に必要な初期資金を抑え、市場投入までの期間を短縮し、開発許認可取得と開発に伴うリスクを軽減します。これらは、経済の先行きが不透明な時期に重要な利点となります。
出典:Federal Reserve | Freddie Mac | NBER | CoreLogic | MSCI Real Assets | U.S. Bureau of Economic Analysis | Harvard Joint Center for Housing Studies | John Burns Research & Consulting | Lincoln Institute of Land Policy | The Conference Board | Preqin | NAHB | U.S. Census Bureau | Federal Reserve Economic Data (FRED) | FOMC Meeting Minutes (March 2025) | Invesco | Preqin | NCREIF | Federal Reserve Bank of Atlanta | Federal Reserve Bank of New York
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